大阪地方裁判所 昭和24年(ワ)510号 判決 1966年3月12日
原告 浅津達夫
被告 大阪市
主文
本訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告は「被告は原告に対し金六、〇〇〇円を支払え」との判決を求め、その請求原因として、「原告は昭和一六年一月大阪市臨時傭として採用せられ、同二一年八月書記に昇進、経済局配給課に事務吏員として勤務中、同二二年四月一日同課検度係に転勤を命ぜられたが、原告はこれを拒み、同日以降欠勤していたところ、被告の市長は同年一〇月二八日附をもつて原告を休職処分に付した。しかし、右転勤命令は原告の承諾を条件として効力を生ずるものであつて、原告が右検度係の技術服務を拒んだ以上、右転勤命令は無効であり、原告の右欠勤は被告側の無効の転勤命令にもとづくものである。したがつて、原告は労働基準法二六条により平均賃金月額七五〇円と同額の休業手当の支給を受けうべきものであるから被告に対し、昭和二二年四月一日以降同二四年三月三一日までの間の右割合による休業手当額よりすでに支給ずみの金額を差引いた残額一万二、三三〇円〇八銭の内金三、〇〇〇円と同法一一四条による附加金一万二、三三〇円〇八銭の内金三、〇〇〇円との合計金六、〇〇〇円の支払を求める」と述べた。
被告代理人は、請求棄却の判決を求め、「原告主張事実中、原告がその主張のごとき経過をたどつて配給課に勤務していたこと、原告が昭和二二年四月一日以降欠勤したこと、被告側が原告に休職を命じたことは、認めるが、原告の欠勤は被告の責に帰すべき事由によるものではない。すなわち、原告は昭和二二年一月頃から出勤状況、勤務成績ともに極めて不良となり、配給事務に重大な支障を生じるようになつたので、同年三月二七日検度係に勤務替を命じたが、原告は一両日出勤したのみで、その後は無届欠勤を継続したので、同年一〇月二八日休職を命じ、翌二三年一〇月二七日休職期間の満了により自然解職となつたものであるから、原告の右欠勤は被告の責に帰すべきものではないし、したがつて、被告として附加金を支払う義務はない。さらに、被告は昭和二二年四月一日より同年一〇月二七日までの給料は全額支給し、同月二八日より翌二三年一〇月二七日までの間は、毎月給料月額の三分の一の休職給を支給している。昭和二三年一〇月二八日以降は、原告が解職となつているから、休職給を支給すべき筋合いではない。」と述べた。
理由
本件記録に徴して明かなように、原告が昭和二五年四月一〇日に担当の裁判官を忌避したのをはじめとして、昭和三八年二月一二日に至る間合計九回に亘り、なんら理由なく担当裁判官の忌避をくりかえして訴訟の進行に協力しない事実に照すと、原告は本訴を追行する真面目な意思を有するものとは到底認め難いのであつて、原告がかかる状態のまま本訴を維持することは、訴権を濫用するものというべきである。なお、当裁判所が本件の口頭弁論期日を昭和四一年二月一七日午前一〇時と指定告知しただけのことで原告が同月九日付で担当裁判官を忌避する申立をしたことは、顕著なる事実であるが、この申立が忌避権を濫用するものであることは、上記の事実に照して明らかであり、訴権を濫用し忌避権を濫用する原告のために、迅速な裁判を受けるべき被告の権益が侵されるべきではないとともに、裁判所の正当な訴訟運営が阻害されるべきではないから、本件のごとき場合には、民事訴訟法四二条本文の適用はないものと解するを相当とする。よつて、本訴を不適法として、主文のとおり判決する。
(裁判官 木下忠良 岩川清 柴田和夫)